1st anniv. Interview


3rd e.p. "lost war chronicles" リリース1周年を記念して、レコーディング・ミキシングを担当した鈴木歩積氏とaoniの山下による対談形式のインタビューを公開!

 

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山下直人(aoni Vo/Gt 以下や)「今回の3rdEP、ほづみさんにレコーディングしていただいたわけなんですけれど、そもそもの話になりますがaoniのことはいつから認知されてましたか?
鈴木歩積(レコーディングエンジニア 以下ほ)「えっとね、たしかWHALEZのレコ発でaoniのライブを観たのが最初だったと思う。そのときにaoniのみんなとも会ったんだよ。
「そうでしたね、僕もよく覚えてます。shutoやblumも出てましたよね。たしか2017年の11月でした。
「そのときWHALEZがリリースした音源もほづみさんによるレコーディングでしたが、それから半年ほど経って今度はaoniのレコーディングをほづみさんにお願いしたいと。
「うん
「齋藤はほづみさんに録ってほしいと前からずっと言ってたんですよ、そういえば初対面のときもtoldのTシャツ着てましたし。
「おお。
「完全に余談なんですが、僕と齋藤はTwitterで知り合って最初はお互いの顔も知らなくて、遊ぼうってなったときの目印が"toldのTシャツ着てるんで見つけてください!"でした、下北沢で。
「Twitterナンパだ。
「出会っちゃいましたね、、aoniの結成秘話です、、、
「なるほどね。
「toldが好きだってずっと言ってて、気合いの入った音源を録るぞ!ってときにほづみさんに依頼しようって決めてたんですね。
「ありがとうございます、光栄だね。
「なので満を持して、このタイミングでお願いできて良かったなと僕も思います。

 

 

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「今回レコーディングで携わってもらってaoniというバンドについてどういう風に感じましたか、ってところを伺いたいです。メンバーについてであったり音楽性についてであったり。
「どういう風に感じたか、、、音楽性はかっこいいと思いますよ。今の若いバンドには少なくなってきているというか、昔はこういうツインギターでギターもベースもブリブリしててみたいな、そういったバンドもけっこういたけれど。絶滅危惧種じゃないけど、こういった正統派オルタナバンドというか、、最近は減った気がする。aoniは年齢はいくつになるんだっけ?
「僕が今23ですね。
「27〜28くらいの世代には結構いるんだろうけど、aoniくらいの年代ではあまりいないんじゃないかな?
「どうだろう、、たとえばMr.Seasideなんかは僕らとサウンドの志向が近い部分もあるのかなと思ったりします。
「ああ、たしかにそうだよね。
「僕がよく思うのは同世代でエモやオルタナを通過してきているような他のバンドと比べてもaoniは爽やかさがなくてジメジメしてるんじゃないかって、、、
「ジメジメか、、というよりaoniは室内っていう感じはするね。
「インドアかアウトドアかみたいなことですかね?
「ライブハウスっぽいということかな。なんというか外で聴いたらすごく気持ちいい!みたいな音楽ではないじゃない。
「たしかに今回収録した曲はそういった色が濃いかもしれないですね。これまでリリースしたepの曲たちが海や都市だったりモチーフがあって景色が浮かぶようなものだったので、今回は内面に向かってる感覚があります。
「そういう"室内っぽいバンド"、"ライブハウスっぽいバンド"、俺もよく見に行ってたけどゼロ年代前半のシェルターとかの感じ。デビューしたばかりの頃のlostageとか、あとはSPIRAL CHORDとかbloodthirsty butchersとかね。そのイメージだね。
「そう言ってもらえるのはとても嬉しいです…!こないだディスクレビューを書いてもらったときにも"aoniはギターロックの再提示をしている"という風に書いていただいてたりとか、、自分たちの好きなひと回りふた回り上の世代のバンドへの憧れを詰め込んでいる部分もやっぱり大きくて、そうやって受け取ってもらえていることがとても嬉しいですね。

 

 

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「次にlost war chroniclesのレコーディング中印象に残ったこと、また作品について感じたことなどほづみさんから聞いてみたいです。
「やっぱり一曲目の"FIELD"はすごくかっこいいなと思ったよ。
あのバカスカした感じとかサビで開ける感じであったりとか、音楽的に自分の好きなジャンルではあったね。
「おおお、嬉しいです…!ありがとうございます。
「レコーディング中に印象に残ったことって言うとなんだろうな、、何日くらいで録ったんだっけ?
「計4日ですね、歌を2日で録ろうとしたのが延びて3日かかりましたね。
「でもそんなにレコーディング中に大きな躓きは無かったよね、わりとスムーズに進んだ印象だったな。"ドラムのフレーズが叩けない"とか"よくわかんないけど納得いかない"みたいなことってよくあることだと思うけど、そういうのは無かったから。
やっぱレコーディング中に印象に残ったことって言えばやましー(山下のニックネーム)が山田孝之に似てるってことに気づいたことかな、丸い山田孝之、、笑
「山田孝之、、そんなことも話してましたね笑
そういうちょっと逸れた話で言うと、歌録りの合間に見てたEarth wind & fireの"September"が途中からテンポ早くなってるよねって会話がやけに記憶に残ってますね、、
そうやって途中でYouTubeで参考になるような動画とか全く関係ない動画も見たり、いい具合にくだけた空気感にすごく安心感がありました。
「ムンくん(Gt松川)とかは以前から知ってるし、aoniのみんなともお互いわりと近い距離感でやりたくて、実際そうやって出来た感じがするよ。
「とてもやりやすい空気で、ありがたかったです…!
「よかった!

 

 

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「エンジニア目線から今回の作品にこだわった部分であったりとかはどうでしょうか?
「やっぱり一発録りだからその空気感というか、、変に直したりはしてないじゃない?これを言ってもいいものかはわかんないけど。変に作り込むことはしなかったし、バンドのイメージとして自分がパッと聴いてこう、、なんかバカスカした感じというかね。ドラムだけでなくそれぞれの楽器が平等に出てるというと変かもしれないけど、同じ尖り方をしているような印象を受けたのでそういう方向性になっていったね。
「バンドが出した音をなるべくそのまま伝えるというか。
「いや、そのまま伝えるというよりは"バンドが出したい音"を実際に出している音に対して受けた印象で、出し切れなかった部分を補う、、、という言い方は変か。長所を伸ばす、やりたいことを印象付けられるようなイメージで。
だからマイナスな操作、たとえば失敗を隠すような編集ではなく、、失敗って言い方もまた変だけどね。すごく素直ではあると思う。
好きな音楽とかも似てると思うからイメージも掴みやすくてやりやすかったし、バンドがやりたいことと自分がこうしたらいいんじゃないかって思うところが同じ方向を向いて出来たんじゃないかと思う。だからそういう部分をプラスにしていくように作ることを意識してやったかな。
「各楽器が同じ尖り方をって先程仰られてましたが、それを丸くしていくというわけでもなく。
「そう、それを聴きやすくするのではなく、、聴きやすくする作業ではあるんだけど尖ってる部分もそれ前提で心地よいものを作ろうとはしていたね。

 

 

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「aoniとしては音源を録るにあたって前作までと決定的に違ったようなことはあったりするの?
「前作までと違ったことというと曲作りの仕方が変わりましたね。今まではワンコーラスほどのデモがあってそこからバンドで広げていたのが、今回はスタジオでなにもない状態からこういうリズムで作りたいとかコード進行やリフだけ最初に決めて口頭でのやりとりをしながら肉付けしていくやり方でした。
「今回の4曲はバンド感が強い感じがするね。
「メンバーで一から作ったぶん、それぞれが考えたフレーズだったりもボツになったりすることはほとんどなかったですね
「曲に対する理解度は全員で共有できてたのかなって思ったね。
レコーディングに関しては今までと違った部分はあった?
「それはもうやっぱり一発録りが初挑戦だったというところですね。
「あ、そうか今までは全部別録りだったんだね。
「ベースドラム以外別録りでしたね。今回は最初に一発録りにしようっていうのは決めてて、4人で音を鳴らしてる空気感を出したいっていうのがありました。実際やってみて一発録りは想像してたよりやりやすかったです。
「そうだよね、メンバーお互い顔を見合わせてやれるから気持ちの面では楽だと思う。ブレイク1つにしてもタイミングを合わせるのに顔が見えるか見えないかで変わるからね。よりライブでやるときと近い演奏が出来るのかなと思う。みんな同時進行で出来るから効率も良いしね。
「一発録りってバラで録るよりも妥協しなければいけないところがたくさん出てくるのかなと思ってたんですけど、結果的に今までで一番納得のいくものが出来たので良かったです。
「バンドで音源を録るときってやっぱり、妥協するというよりたとえばちょっとリズムがずれていたりするのを全部揃えてしまっても結局面白いものは出来ないなといつも思うんだけど。ひとつの絶妙なズレとかがあったときに、そういった自分たちのクセを長所として捉えられるか短所として直すかというところに誰しも葛藤を持っていて、それが一発録りだと全体的な空気感が一気に見えるからそこに固執する時間を取られなくて済むし、まあ"これはこれでいいんじゃない"みたいなさ。人間らしくて良いんじゃないかと。そういう絶妙なズレから表情が出るのがバンドでありロックであり、ということも思うしaoniのスタイルに一発録りっていう方法は合ってたのかもしれないね。

 

 

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「あとは今までと違った部分というと、先にレコーディングの日程が決まっている状態で新曲を作って収録したというところですね。
「最初は2曲入りのシングルを録りたいっていってたもんね。
「そうですね、元々"FIELD"と"scarecrows"の2曲で考えていたのがEPを録るということになって後半の2曲に取りかかりました。
「結果的に4曲にしたのは良かったよね、2曲だと聴く人も物足りなく感じるかもしれないし。
「今回、制作前からかなり気合が入っていたので結果として4曲入りEPというまとまった形になって良かったです。
"brother"と"glider"は本当に録る1週間前くらいに完成したので、出来立てホヤホヤの鮮度の高いものを出せたというところでは良かったですね。ヒヤヒヤしたところもあったんですけど笑

 

「もしこの先またaoniの音源を一緒に録る時が来たら、もっと関係が近くなった状態からスタートして共有しやすい部分も増えていると思うし、音楽的にも技術的にもお互いにもっと成長して出会えるといいね

「またいつか録ってもらいたいです、その時はまたよろしくお願いします...!


鈴木歩積

 

レコーディングエンジニアとして様々なバンドの作品に携わる。

自身のバンドtoldではギターボーカルを担当

 

・Recording engineer  (https://szkrecording.tumblr.com/)

・told (http://told.jp/)

Twitter (@outofremember)